会社案内

ごあいさつ

私たちは新潟県糸魚川市で、近隣河川に回帰するサケの有効利用と新潟県立海洋高等学校(以下、海洋高校)の職業教育を支援するために当社を設立しました。世界ジオパークにも認定される糸魚川の特異な地形は、古より良好な漁場を形成してきました。1898年(明治31年)に海洋高校がこの地に生まれたのは必然であり、社業である海洋高校の職業教育を支援するしくみ「糸魚川版デュアルシステム」の運用と発展は、歴史的な使命も負っていると考えています。弊社における企業実習を通じて、将来の社会を支える高校生が食品産業の一端に触れながら自己効力感を高め、その後の職業生活を前向きに生きるマインドを育む機会を提供しながら、水産業の発展と地域の活況創出に貢献していきます。

代表取締役 松本将史

会社概要

会社名 株式会社能水商店(のうすいしょうてん)
所在地 〒949-1352 新潟県糸魚川市能生9396番地
代表者名 代表取締役 松本 将史
電話番号 025-556-6950
FAX番号 025-556-6955
URL http://www.nousui-shop.com/

沿革

2010年 9月 食品科学科3年生の科目「課題研究」にて鮭魚醤の開発始める
2013年 3月 食品研究部1年笠原大吾君が日本水産学会春季大会高校生ポスター発表にて「鮭魚醤の開発に関する研究」(「最後の一滴」の発酵中におけるホルモル窒素量の変化、製品のアミノ酸分析及びコンドロイチン硫酸量の定量)を発表。
8月 道の駅「マリンドリーム能生」にて鮭魚醤「最後の一滴」試験販売開始
2015年 4月 糸魚川市「糸魚川市水産資源活用産学官連携事業」として、鮭魚醤「最後の一滴」やその他の水産加工品の製造販売をする事業所「シーフードカンパニー能水商店」を一般社団法人能水会(海洋高校同窓会)が設立。食品研究部が放課後と休日に部活動として、食品科学科3年生が科目「総合実習」(年間12時間程度)の実習として事業運営に携わる。
10月 「フード・アクション・ニッポン アワード2015」審査委員特別賞受賞
2016年 4月 食品科学コース3年生が科目「課題研究」および科目「総合実習」の実習として年間100時間程度、事業運営に携わる
10月 「グッドデザイン賞2016」受賞
「第69回 新潟日報文化賞」(社会活動)受賞
11月 「第3回 ディスカバー農村漁村の宝」選定(農林水産大臣賞)
2017年 4月 ハラール認証(マレーシアイスラム開発局JAXIM)
8月 「第10回海洋立国推進功労者表彰(地域振興部門)」受賞(内閣総理大臣賞)
2018年 4月 株式会社能水商店設立
  食品科学コース3年生が科目「課題研究」および科目「総合実習」の実習として年間120時間程度、事業運営に携わる。
6月 糸魚川市水産資源活用産学官連携調印式
2021年5月 文部科学省委託事業「マイスター・ハイスクール」 管理機関
新潟県立海洋高等学校と企業・地域が連携した実践的な教育プログラムの運営・管理を行う。
6月 「最後の一滴」おもてなしセレクション2021 受賞
10月 「新潟県優良リサイクル事業所」表彰
2022年4月 直営店「新潟海洋高校アンテナショップ能水商店」オープン
2023年3月 「NIGATA GASTORONOMY AWARD 特産品30」 最後の一滴 受賞

地図

能水商店ものがたり

にいがた鮭の魚醤「最後の一滴」の開発から始まる能水商店。当時から海洋高校生とともに商品を育ててきた現社長が、能水商店の過去・現在・未来を語ります。

株式会社能水商店 代表取締役 松本将史

能生川のサケとの出会い

2002年の海洋高校赴任当時、1970年代後半から始まったサケ放流事業の進展により回帰サケの県内河川への遡上数が増加していて、海洋高校近くの能生川にも年間1万尾を超えるサケが遡上していました。孵化放流事業向けの人工授精が終わったあとの魚体は市場価値が高くなく、その有効利用が課題として海洋高校に持ち込まれました。幼い頃から、私の釣りのポリシーは「釣った魚は必ず食べる」でしたので、漁獲後利用されない鮭を何とかしたいと思い、生徒とともにサケの加工の研究に取り組みました。

最後の一滴

能生川河口と鮭採捕場

  • 当時の生徒達と

  • 教員時代は食品化学や食品衛生、水産加工実習等を指導

内地留学中の発酵
 

腥臭の中心成分は脂質酸化物。化学的には加齢臭に近い構造である。

最初は冷凍すり身にするために試行錯誤しましたが、遡上サケ特有の腥(なまぐさ)臭が開発を阻みました。2011年には、個人的に教員内地留学制度を利用して東海大学海洋学部の研究生としてこの臭気の研究に取り組み、その原因となる主要成分を明らかにしましたが、臭気を除去する応用技術開発にまでは至りませんでした。
 実は、半年間の内地留学に行く前に、新潟県水産海洋研究所と新潟県食品研究センターの共同研究報告書に載っていたホッケやニギスに醤油麹を加えて魚醤を造る方法が目に止まり、サケ肉を原料に生徒に仕込みをさせていました。内地留学が終わって学校に戻り、魚醤のもろみを絞ると、結構美味しい魚醤が。そしてあの腥臭がしない。これはいける!と思いました。

 

試験販売開始

その後、仕込みに使用する魚体部位や醤油麹の配合割合等の検討を重ね、2013年7月に完成。地元道の駅で試験販売を開始しました。

  • 開発当初のパッケージデザイン

  • 地域イベントでの販売

今見るとダサいラベルですね!(笑) でも当時は私も生徒も真剣でした。販売イベント毎にプレスリリースを重ね、県内の新聞やTVに取り上げていただき、商品認知を広めることができました。「最後の一滴」というネーミングは当時の生徒が考えています。

活動費は自分たちで稼ぐ

県内での商品認知が広まったので県外でもPR販売したい。そんなとき、生徒の旅費は自己負担になります。また、新しい商品をつくるために実験機器も買いたい…。活動が進展するなかでこんな悩み出てきました。この課題を克服するために、自分たちで最後の一滴を造って売ってその利益を自分たちの学習に投下しよう!という発想が生まれました。

シーフードカンパニー能水商店の設立
 

シーフードカンパニー設立式。校長・糸魚川市長・同窓会長が発酵タンクのスイッチを入れた。

そのための基盤として、学校から徒歩10分の場所にある元食品工場の建屋に糸魚川市の補助で魚醤生産設備を設置。海洋高校同窓会である一般社団法人能水会が運営法人となり、2015年から同窓会の事業として生徒が魚醤や関連加工品を生産販売する「シーフードカンパニー能水商店」を立ち上げました。工場の稼働は部活動時間の放課後と休日のみ。放課後に製造、土日は地域のイベントを中心に販売、というサイクルで、生徒とともに普及に取り組み、同窓会や地域の人に支えられながら、商品を育てることができました。もちろんこのプロセスのなかで、疑似体験である学校内の実習とは異なり、食品産業の論理を体験的に学びとるリアルな学習機会提供がされたのは言うまでもありません。

 

  • 瓶詰は時間がかかるので土日の部活で

  • 海洋高校PRも兼ねた催事販売

  • マレーシアや香港での展示会や催事販売に過去5回参加。うち3回延べ13人の旅費と出展料等は全て事業利益より支出。

  • 催事販売の名物イベント「あんこう吊るし切り」

この間、高校生の地域資源を活用した学習活動を糸魚川市・同窓会・学校が連携して事業化したことが評価され、様々な受賞をしました。

2015年 「フード・アクション・ニッポンアワード2015」審査委員特別賞受賞
2016年 「グッドデザイン賞2016」受賞
「第69回 新潟日報文化賞」(社会活動)受賞
「第3回 ディスカバー農村漁村の宝」選定(農林水産大臣賞)
2017年 第10回海洋立国推進功労者表彰(地域振興部門)受賞(内閣総理大臣賞)

実は、海洋高校は私が赴任した頃から慢性的に定員割れをしていました。多くの方の協力を得て創ってきた最後の一滴を核とした取り組みは、この課題解決のひとつの方法でもあります。様々な要素が複合的に作用した結果ではありますが、2015年以降、他県からの入学者が年々増加し、この間に女子寮の新設と男子寮の増築がなされ、人口減少著しい地域にあって学校の活況が維持されています。

  • 海洋高校校舎

  • 男子寮の食堂にて

退職と株式会社設立

さて、教員と魚醤製造販売の「二足のわらじ」で取り組んできた3年間ですが、お客様の応援あって売上を伸ばすことが出来ました。引き続きメーカーとして安全な商品を安定的に供給し、生産者・流通業者・消費者から喜ばれ、海洋高校の生徒にも良質な職業教育を施さなければなりません。このような必要性に鑑みると、同窓会ではなく会社組織で運営するのが全うな判断でしょう。

また、私自身、民間経験なく現場を知らずに水産加工の教鞭をとっていた20代〜30代前半に向き合った生徒たちに、果たして良い"教え"をしていたのか?この反省に拠り、海洋高校生に「実物学習」の機会を提供しながら循環するサケ資源に基づく事業を拡大していきたいという思いが強くなり、2018年3月に16年間勤めた海洋高校を退職、株式会社能水商店を設立しました。

糸魚川版デュアルシステム

日本の専門高校で行われる職業教育は、依然として座学による系統学習に重きが置かれ ています。徒弟制度に基づく技術伝承を重んじてきたドイツ文化圏では、現在でも専門高校生は週5日のうち3〜4日を企業実習に費やし実地に職業教育を受ける「デュアルシステム」が運用されています。弊社と糸魚川市、海洋高校の産学官連携事業は、単なるインターンシップの連続ではなく、その学習活動が地域振興に結びつくという付加価値を表現するために「糸魚川版デュアルシステム」と呼ばれています。株式会社設立後も食品科学コースの3年生が週1日・食品研究部(部活動)が放課後や休日に、商品開発や製造、品質管理、マーケティング等の課題解決に取り組み、知識技術の習得のみならず、考える力・行動する力を養っています。

2018年糸魚川市水産資源活用産学官連携調印式(左から私、米田市長、椎谷校長)

  • 商品開発(魚醤の旨味成分量の測定)

  • 商品開発(微生物制御に欠かせない塩分の測定)

最後の一滴

商品開発(混獲される小型ノドグロの有効利用)

最後の一滴

マーケティング(商品パッケージデザインの検討)

 

催事販売(集客イベント企画も)

能水商店のこれから

2019年以降、地元の能生川含め上越市の桑取川以西の県内河川に遡上した売り先のないサケを全て買い上げています。能生川産サケは最後の一滴の原料として、他河川のサケは他業者から依頼された一次加工を施して出荷しています。これにより、サケ資源の有効利用を目指した当初の目標は達成されました。今後は、より付加価値を高められる魚醤原料仕向け量を増やして経営安定化を図り、孵化放流事業にも参画することで、循環するサケ資源を「守り・活用する」企業として成長していきたいと考えています。もちろん、この過程の中に海洋高校生への良質な学習機会をつくり、人材育成と地域振興に寄与できる仕組みを形にしたいと思っています。2021年5月からは、文部科学省の委託事業「マイスター・ハイスクール」の管理機関として、海洋高校と企業・地域が連携した実践的な教育プログラムの運営・管理を行なっています。糸魚川版デュアルシステムをさらに拡充し、海洋高校の存立を通じた、まちの維持・発展に繋げていこうと考えています。

<関連リンク>
マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)
令和5年度マイスター・ハイスクール事業について

  • 社員は内水面漁協組合員として
    サケ増殖事業にも参画

  • 食品研究部の生徒と一緒に

令和2年度補正ものづくり補助金により作成
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